巻不詳の断片、エピグラムと真偽未詳作を添えて
Ἀδήλων βιβλίων ἀποσπάσματα καὶ ἐπιγράμματα
解題
これはこの集成の落穂籠である——古代世界がサッポーのものとして救い上げ ながら、どこに属するのかを告げてくれなかったもののすべて。アレクサンドリア の校訂版は彼女の歌を韻律ごとに巻へ整理したが、これらの行を保存した引用者 たち——韻律の実例を漁るヘパイスティオン、食卓の蘊蓄を集めるアテナイオス、 アイオリス方言の属格を追う文法家たち、珍しい語をねらう辞書編纂者たち——は、 どの巻から頁を破り取ったのかをめったに言わなかった。それゆえ所属不明の 断片には、彼女のもっとも名高い文がいくつも含まれ、しかももっとも文学から 遠い理由で生き残っている。肢体をほどくエロス、あの甘く苦い這い寄る生きもの は、ヘパイスティオンがその韻律を気に入ったから残った。恋しさのあまり機を 織れない娘も、同じ理由で残った。そして未来への一行の宣言——誰かが、のちの 世にも、わたしたちを思い出す——は、ディオン・クリュソストモスが「このうえ なく美しく」語られたと思ったから残った。ここにはまた、祭儀の叫びをともなう アドニスの挽歌があり、ヘルメスが酌をする神々の婚宴があり、リュディアの すべてより重い小さなクレイスがいて、競争相手のゴルゴとアンドロメダ、 ポリュアナクスの家、満月と祭壇をめぐる女たちがいる。そのあとには、正直さの 順に並ぶ——アルテミスの詩から印刷を許されるただ二語の誓い。ギリシア詞華集 のなかを彼女の名で旅する三篇のエピグラム——ティマスとペラゴンの墓碑銘と アリスタの奉納詩という優雅なヘレニズム期の作で、ほぼ確実に彼女のものでは なく、それでも古代人がそのように編んだがゆえに、現存する集成の一部である もの。校訂者がサッポーかアルカイオスか決めかねる切れはしたち。引用者自身が 種を明かしてしまう二つの引用——アテナイオスはアナクレオンの詩節を、引き ながら疑う。そして最後に、単語たち。彼女が「暁」を独特の形で言ったことを 大切に思った人びとが、一語ずつ伝えたものである。集めることこそが眼目で ある。たいていの版は選集を刷って手を止めるが、本書は落穂を拾い集める—— 番号を振り、出典を示し、疑いは疑いとして明記して——現存するサッポーの 全体が、実際にここに在るように。底本はコックス『サッポー詩集』(一九二四年、 英語版ウィキソース経由)、ペラゴンのエピグラムのみエドモンズ『リュラ・ グラエカ』(一九二二年)をギリシア語版ウィキソース経由で用いた。
しなやかなアフロディテゆえ、少女への恋しさに打ちひしがれて。
πόθῳ δάμεισα παῖδος βραδίναν δἰ Ἀφρόδιταν.
気性の者ではない——静かな心を持っているのだ。
ὄργαν, ἀλλ᾽ ἀβάκην τὰν φρέν᾽ ἔχω.
[別の]もっと若い臥所を勝ち取るがいい。
わたしは耐えられないのだから——
年上の身で、年下の男と暮らすことには。
λέχος ἄρνυσω νεώτερον,
οὐ γὰρ τλάσομ᾽ ἔγω ξυνοίκην
νεῳ γ᾽ ἔσσα γεραὶτερα.
甘く苦い、抗うすべのない、這い寄る生きものが。
γλυκύπικρον ἀμάχανον ὄρπετον.
サッポーよ、なぜ、幸多きアフロディテを——?
Ψἀπφοι τί τὰν πολύολβον Ἀφρόδιταν;
その舌が、なにか悪しき言葉をかき立てていないのなら、
恥じらいがあなたの眼をとらえることはなく——
あなたは正しいことのために、率直に語っていたはずだ。
καὶ μή τι ϝείπεν γλῶσσ᾽ ἐκύκα κάκον,
αἴδως κέ σ᾽ οὐ κίχανεν ὄππατ᾽
ἄλλ᾽ ἔλεγες περὶ τῶ δικαίως.
そして、その眼に宿る優美を、おおきくひらいて見せておくれ。
καὶ τὰν ἔπ᾽ ὄσσοις ἀμπέτασον χάριν.
胸を打て、娘たちよ、そして衣を引き裂け。
καττύπτερθε κόραι καὶ κατερείκεσθε χίτωνας.
Ἐρμᾶς δ᾽ ἔλεν ὄλπιν θέοις οἰνοχόησαι.
κῆνοι δ᾽ ἄρα πάντες καρχήσιά τ᾽ ἦχον
κάλειβον ἀράσαντο δὲ πάμπαν ἔσλα
τῳ γἀμβρῳ.
[両者をまぜ合わせたものこそ、幸福の極みを占める。]
[ἠ δ ἐξ ἀμφοτέρων κρᾶσισ εὐδαιμονιας ἔχει το ἄκρον.]
女たちは祭壇をめぐって立ち並んだ。
αἰ δ᾽ ὠς περὶ βῶμον ἐστάθησαν.
Πωλυανάκτιδα παῖδα χᾶιρην.
むなしく吠える舌を、見張っておくこと。
μαψθλάκαν γλῶσσαν πεφυλάχθαι.
倦むことを知らぬ声を、この足もとに据えて。
アイトピアに、レトの娘に、わたしを奉納したのはアリスタ、
サオナイアダスの子ヘルモクレイデスの娘。
あなたの仕え女です、女たちの女王よ。彼女を喜びとして、
心よく、わたしたちの一族に誉れをお与えください。
φωνὰν ἀκαμάταν κατθεμένα πρὸ ποδῶν,
Ἀιτοπίᾳ με κόρᾳ Λατοῦς ἀνέθηκεν Ἀρίστα
Ἐρμοκλειδαία τῶ Σαοναϊάδα,
σὰ πρόπολοσ, δέσποινα γυναικῶν, ᾆ σὺ χαρεῖσα
πρόφρων ἁμετέραν εὐκλέϊσον γενεάν.
λέξατο Φερσεφόνας κυάνεος θάλαμος,
ἄς καὶ ἀποφθιμέμας πᾶσαι νεοθᾶγι σιδάρῳ
ἄλικες ἰμμερτὰν κρᾶτος ἔθεντο κόμαν.
ὠρχεῦντ᾽ ἀπάλοις ἀμφ᾽ ερόεντα βῶμον
πόας τέρεν ἄνθος μάλακον μάτεισαι.
ὗμνον ἐκ τᾶς καλλιγύναικος ἐσθλᾶς
Τηιος χώρας ὃν ἀείδε τερπνῶς
πρέσβυς ἀγαυός.
物語を織る者(μυθοπλόκος——エロスを指す彼女の言葉だと、マクシモス・テュリオスは言う)。
かがやき——ものの嬉しい照り(τὸ γάνος。アリステイデス)。
アフロディテの娘——ペイトー、「説得」への彼女の呼び名(ヘシオドスの古註)。
バルモスとサルビトス、彼女の奏でた弦楽器の名(アテナイオス)。
美しい公会堂(καλὸν δημόσιον。エウスタティオス——文脈は失われている)。
悪意のない(ἄκακος。レクシコン・セゲリアヌム)。
支柱に這わせた葡萄(ἀμαμάξυδες)、そして彼女自身のアイオリス語の暁、αὔως
(エテュモロギクム・マグヌム)。
丈の短い衣(βεῦδος。ポルックス)。
小間物の袋(γρύτη。プリュニコス)。
歩いて渡れる(ζάβατον。パリの写本)。
危険——彼女自身の語尾のままに、κίνδυν(コイロボスコス)。
スキタイの木——黄色の染料の木タプソスへの彼女の呼び名(ポティオス)。
そして、ピロストラトスが彼女のものと伝える、娘たちへの挨拶——
薔薇の腕の、流し目の、頬うつくしい、蜜の声の者たちよ。
τὸ γάνος——アリスティデス。
Ἀφροδίτης θυγατέρα——ヘシオドスの注釈者(ペイトーについて)。
βάρωμος
βάρμος, σάρβιτος——アテナイオス(楽器の名)。
καλὸν δημόσιον——エウスタティオス。
ἄκακος——『レクシコン・セグエリアヌム』。
ἀμαμάξυδες, αὔως——『エテュモロギクム・マグヌム』。
βεῦδος——ポッルクス。
γρύτη——プリュニコス。
ζάβατον——パリ写本(クラーマー校訂)。
κίνδυν(対格)——コイロボスコス。
ξύλον Σκυθικόν(θάψοςの代わりに)——フォティオス。
᾽Ροδοπήχεις καὶ ἐλικώπιδες καὶ καλλιπάρῃοι καὶ μειλιχόφωνοι——ピロストラトス;
アリスタイネトス(婚礼歌における μειλιχόφωνοι)。